研究概要 |
「目的」 我々はこれまでの研究で,乳業用乳酸菌であるL.acidophilusグループ乳酸菌がマクロファージ(Mphi)を刺激し,インターフェロン(IFN)誘起することを明らかにした.IFNを含むサイトカインは免疫賦活作用および生体防御に深く係わる因子である.従って,乳酸菌によるサイトカイン産生を究明することは,生体調節および防御因子を含む機能性食品として,乳酸菌依存性の乳製品を開発する上で重要である. 「方法」 C57BL/6マウスより腹腔Mphi(TG-Mphi),脾臓Mphi(SP-Mphi),パイエル板細胞(PP-Ad cell)を調製し,in vitroにおいて,L.gasseri(13菌株)で刺激し,その培養上清のIFNおよびIL-1活性をプラーク形成抑制法,co-stimulatorアッセイ法でそれぞれ測定した.IFNおよびIL-1mRNAの発現量は,RT-PCR法により検討した.total RNAはAGPC法により調製した. 「結果」 L.gasseri DSM20243^T,JCM1022株で刺激(200mug/ml)したTG-Mphiの培養上清中で約11IU/mlのIFNが誘起これた.DSM20243^T株刺激(100mug/ml)により,SP-Mphi培養上清中で最も高いIFN力価(約47IU/ml)が認められた.一方IL-1は,TG-,SP-MphiをJCM5813株で刺激した培養上清で最も高い活性が認められた.PCRの結果,DSM20243^T株刺激SP-MphiおよびPP-Ad cellにおいてIFNalpha mRNAの発現が認められ,JCM5813株刺激SP-MphiにおいてIL-1alpha mRNAの発現が確認された.さらに,アクチノマイシンDおよびシクロヘキシミドの添加試験により,IFNalpha mRNAは菌体刺激後30分以内に合成され始め,IFNalphaの合成・分泌は刺激後3〜6時間以内に開始し,60〜70時間で急激に増強されることが判明した.以上の結果より,L.gasseriは,Mphiの培養系で,IFNalpha,IL-1alpha mRNAの転写を促進させる機能を有することが証明され,L.gasseriを含む乳製品の機能性食品としての位置付けが可能であると考えられた。
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