一部の日本鶏の近交係数は近年上昇してきている事が報告されている。貴重なニワトリの遺伝資源を効率的に保存するためには、ニワトリを対象とした新たな繁殖技術の体系を構築する必要があるが、その一つのとして、始原生殖細胞(PGC)を利用する方法が考えられる。ニワトリPGCは発生初期胚の生殖半月に見いだされ、孵卵約2日目に血液中を移動した後、生殖巣原基に移住し、卵祖細胞または精祖細胞に分化する。 本研究ではまず血液中PGC数の系統間差を調べる目的で肉用鶏と卵用鶏を用いた。両者の受精卵を38℃で50〜70時間培養し、ステージ13から18(Hamburger & Hamilton 1951)までの血液をガラス毛細菅を用いて採取した。採取した血液をこの度新たに開発した計測法を用いて単位血液量中PGC数の鶏種による差異を検討した結果、肉用鶏と卵用鶏の間にPGC数の有意差は認められなかった。 次に、孵卵2日卵の卵殻並びに卵殻膜を一部取り除き、ステージ14の胚から4時間おきに3回採血を行った。採血と採血の間はビニールテープを用いて卵殻を取り除いた部分を覆い、採血間の水分の蒸発を防ぐ。採取された血液は、先と同様な方法で希釈し、標本を作製した後PGC数を計測した。その結果、基本的に先と同様な結果を得た。 以上の結果により、Singh and Meyer (1967)が報告したステージ15または16における血液中PGC数の極大値は現実には存在しない可能性が高いと思われる。
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