研究概要 |
我が国では牛肉の重要な形質として脂肪交雑のよさが求められている。この脂肪交雑の生成には脂肪細胞分化が重要な鍵を握ると考えられる。近年マウスの培養細胞を用いて、脂肪細胞への分化の際に転写制御因子である C/EBP(CCAAT/Enhancer Binding Protein)ファミリー(alpha,beta,delta)の発現が誘導されることが報告された。さらに C/EBPalphaが脂肪細胞のマーカー遺伝子の発現を活性化することも示され、 C/EBPファミリーが脂肪細胞分化に重要な働きをしていると考えられる。本研究ではウシの脂肪交雑の形成過程を脂肪細胞分化の点から解析し、脂肪細胞分化の制御因子の発現を指標とした脂肪交雑の子牛段階での評価法の確立を目的とし、その第一段階としてウシ C/EBPファミリー遺伝子のクローニングを行った。 黒毛和種牛血液よりゲノムDNAを調製し、制限酵素MboIを用いて部分分解反応を行った。9-23Kbの長さのDNA断片を分画・精製し、lambdaファージベクターに挿入してウシ遺伝子ライブラリーを作成した。このライブラリーをマウスC/EBP遺伝子(alpha,beta,delta)をプローブに用いてスクリーニングし、1.4x10^6のファージから3個の陽性クローンを得た。この3クローンのうち2つがalphaプローブに対して、もう1つがdeltaプローブに対して陽性であった。alpha及びdeltaのクローンについてlambdaファージDNAを調製し、Southern hybridizationによりC/EBP遺伝子領域の特定を行った。C/EBP遺伝子領域すなわちシグナルを呈しているDNA断片を回収し、プラスミドベクターに挿入し、挿入されたDNA断片の塩基配列をオートシークエンサーにより決定した。決定された塩基配列はマウスの配列と高い相同性を示し、クローニングされた遺伝子がウシC/EBPalpha及びdelta遺伝子であるものと判断された。
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