生体内微量元素である亜鉛とカドミウムの相互作用による免疫担当器官に対する影響を検索する目的で、雄ラットに6種類のカドミウム・亜鉛調整精製飼料(カドミウムの含量が0.01ppm以下および0.3ppmの2種類にそれぞれ低亜鉛レベル(3ppm)、通常亜鉛レベル(30ppm)、高亜鉛レベル(1000ppm)および市販飼料で離乳直後の3週齢から12カ月間飼育し、次のような結果を得た。 1.低亜鉛レベルの飼料で飼育した群では体重の増加抑制傾向がみられたが、最終体重において各群間において有意な変化はみられなかった。 2.血清中亜鉛濃度は、飼料への亜鉛添加量に比例して高い値を示したが、低亜鉛レベルの飼料を給与した群と市販飼料を給与した群では有意な差はみられなかった。 3.血清中カドミウム濃度は、市販飼料を給与した群と比べ、カドミウム・亜鉛調整精製飼料を給与した群では低い値を示す傾向がみられたが、カドミウムおよび亜鉛の添加量に相関する変化はみられなかった。 4.胸線および脾臓重量では各群間に有意な変化はみられなかった。 5.胸線および脾臓の組織学的検索においても各群間に形態学的な差異は認められなかった。 以上のように、亜鉛とカドミウムの相互作用について、これらの元素の添加量に相関するような変化は何も認められず、この2つの元素の相互作用は確認できなかった。また、本試験では亜鉛の欠乏量として飼料への添加量を3ppmとした。しかしながら、低亜鉛飼料を給与した群の血清中亜鉛濃度は市販飼料とほぼ同等の値であり、さらに、成長の抑制、脱毛や皮膚炎といった欠乏症はみられておらず、重篤な亜鉛欠乏状態を引き起こしていないと考えられた。このことが、今回検索した胸線および脾臓に対して何ら組織学的な影響がみられなかった原因であると考える。現在、文献的には亜鉛欠乏状態を引き起こす条件(飼料中亜鉛濃度3ppm)で飼育したのにもかかわらず、亜鉛欠乏モデルを作出できなかったのかについて検索中である。
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