本研究では、イヌ血小板凝集に関与するα2-アドレナリン受容体の薬理学的性質とストレスやショック時に放出される生理活性物質が血小板α2-受容体活性に及ぼす影響の一部を解明する目的で実験を行い、以下の成績並びに知見を得た。1.正常犬における16種類のα-受容体作動薬・遮断薬の血小板凝集効果およびADP・コラーゲン凝集促進効果を調べた結果、各薬物単独での血小板凝集能はなかったが、アドレナリン(Adr)、ノルアドレナリン(Nor)、オキシメタゾリン(Oxy)、キシロメタゾリン(Xyl)ではADPおよびコラーゲン凝集促進効果を示すことが判明した。2.α-受容体作動薬のADP凝集促進効果に対する各々α2-、α2・α1-、α1-受容体遮断薬前処理の影響を調べた結果、α2-受容体遮断作用を有する薬物により効果的に拮抗された。このことから、Adr、Nor、Oxy、XylのADP凝集促進効果はα2-受容体を介することが示唆された。3.生理活性物質のβ-エンドルフィン(β-E)、プロスタグランジンE2(PGE_2)、腫瘍壊死因子(TNF_<-α>)、エンドセリン(END)、インターロイキン-1(IL-1_α)単独添加は血小板凝集能を示さなかった。4.これら生理活性物質存在下におけるAdrのADP凝集促進効果を検討した結果、β-E、PGE2、ENDはAdrのADP凝集促進効果を変えなかったが、TNF_<-α>はその効果を助長する傾向が認められ、TNF_<-α>はα2-受容体を介する血小板凝集機序に相互作用を示す可能性が示唆された。 5.^3H-ヨヒンビンを用いたRRA法ではβ-E、PGE_2、ENDは血小板α2-受容体数と親和性を有意に変えなかった。今後、TNF-α、その他の生理活性物質について、血小板α2-受容体活性への影響を更に詳細に検討する計画である。
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