申請者はこれまで下垂体性腺刺激ホルモン産生細胞細胞より分泌される性腺刺激ホルモン以外の蛋白、クロモグラニンA(C_gA)とセクレトグラニンII(S_gII)の局在に注目し、同細胞の分泌機構について解析をしてきた。今回の研究課題では、LHRH静注あるいは去勢で雄ラットの同細胞を刺激した後、C_gAおよびS_gIIがどのような細胞内局在の変化を示すか、免疫組織化学的に検討した。 生理的条件下の性腺刺激ホルモン産生細胞では、S_gIIは小型分泌顆粒に、C_gAは大型分泌顆粒にそれぞれ限局し、両蛋白が共存する分泌顆粒はほとんど認められない。ところが、同細胞をLHRH静注で刺激したところ、静注30分後か2時間後まで、生理的条件下ではほとんど見られない第三のタイプの分泌顆粒が観察された。この顆粒は、電子密度の高い芯状の部分とそれを取り囲むやや電子密度の低い周囲部分からなり、C_gAはこの顆粒の周囲部分に、S_gIIは芯状部分にそれぞれ分離して局在していた。この中間型の分泌顆粒は、去勢手術1週間後にも頻繁に認められた。 以上の結果より刺激条件下の性腺刺激ホルモン産生細胞では、C_gAだけが局在する大型顆粒とS_Giiだけが局在する小型顆粒に加えて、両者が共存する中間型の分泌顆粒が出現することが示された。しかし、この場合でも、C_gAとS_gIIとは同一顆粒内で分離して凝集し、これからが分泌経路における蛋白の選別過程に関与する可能性が示唆された。 以上の研究成果の一部は、研究発表欄に記載の雑誌論文(1)および第98回解剖学会総会(1993年7月、札幌)、第46回日本細胞生物学会大会(1993年10月、前橋)で報告した。 今後は、本研究で得られた知見を推し進め、C_gAとS_gIIが分泌経路においてどのように他の蛋白の選別過程に関与するか、その生化学的背景も含めて検討していく予定である。
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