研究概要 |
1.成熟ニワトリの骨格筋(前広背筋と後広背筋)および心室筋の凍結切片を作製し、各種筋蛋白質の発現状況を骨格筋、心筋および刺激伝導系(プルキンエ線維)の3者間で蛍光抗体法により比較した結果、以下の知見を得た。コネクチン、ジストロフィンおよび横紋筋タイプのミオシンはいずれの筋組織においても発現していた。ネブリンは骨格筋で発現していたが、心筋およびプルキンエ線維では陰性であった。トロポニンの各成分(T、I、C)については、骨格筋では骨格筋型が,心筋およびプルキンエ線維では心筋型が発現していた。しかし、抗骨格筋型トロポニンTモノクローン抗体(D5)に対する反応性は、心筋において陰性であったのに対し、骨格筋およびプルキンエ線維では陽性であった。これらのことから、プルキンエ線維は筋蛋白質の発現状況の面で、骨格筋と心筋との中間的な性質をもつことが考えられた。 2.骨格筋および心筋で細胞膜直下に存在することが知られているジストロフィン、筋原線維と細胞膜との結合に関与すると考えられているビンキュリンおよびスペクトリンの局在様式について、上記と同様の方法により、骨格筋、心筋およびプルキンエ線維の3者間で比較した。その結果、ジストロフィンは骨格筋では細胞膜下で格子状(そのうちの横稿は2本線)に、心筋では横紋状(1本線)に局在しプルキンエ線維では多くの場合瀰漫性に分布するが、部位によっては横紋状に局在していた。ビンキュリンはジストロフィンに類似した局在を示すが、より限局していること、またスペクトリンの局在はジストロフィンとほぼ一致しててることが明らかになった。これらのことから、ジストロフィンも筋原線維と細胞膜との結合に関与、筋組織間におけるこれらの蛋白質の分布の違いは両者の結合の緊密度を反映しているのではないかと考えられた。
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