本研究は今まで我々が明らかにしてきた仙骨、陰部の両神経叢の層的配置について、後大腿皮神経の解析の結果に適合するか確かめることを目的として行った。 仙骨神経叢と陰部神経叢をその枝とともに完全に取り出し、後大腿皮神経の線維解析をおこない、本神経の各枝が仙骨神経叢のどの位置から起こっているかについて調査した。本研究には、研究計画に示した4体8側の他に、すでに標本として取り出し保存してあった仙骨神経叢3体5側を用い、水中に固定した標本を実体顕微鏡下にて解析をおこなった。 その結果、本神経の各枝は下殿神経、総腓骨神経、脛骨神経から起こっており、また一部は陰部神経の背側面からも起こっていることが確認された。各枝は、下殿神経、総腓骨神経、頸骨神経の各神経より起始する枝は、同じ順で大腿後面の外側部から内側部へと分布し、陰部神経背側面より起始する枝は会陰部の外側部(陰部神経皮枝の分布域の外側)に分布していた。我々はこれまですでに仙骨神経叢の背腹の層的構成について報告した。それらと合わせて、後大腿皮神経の各枝の分布域と神経叢内における背腹の層的関係には相関が見られることが明らかにされた。また、下殿皮神経についても同様の関係が殿部において見られることを確認した。これらの一部については第98回日本解剖学会総会においてすでに発表した。 また仙結節靱帯貫通神経は、層的にも位置的にも後大腿皮神経と陰部神経皮枝との間の中間的位置にある神経であることを確認した。これらの神経について、すでに報告した上殿神経の皮枝との関係についても含めて現在論文投稿準備中である。
|