フレンド赤白血病細胞では分化という細胞機能の方向性に対し、ヘテロクロマチン量の増加と全RNA合成活性の低下という反比例的な関係が観察されている。すべての細胞が全遺伝子を保有していることを考えると、細胞が分化し特殊化へ進むにつれ、不必要となる遺伝子が不活化・固定化されるものと考えられ、その機構が働くとユ-クロマチンがヘテロクロマチン化するものと想像されるが、この部分の詳細は不明のままである。本研究では赤白血病細胞の一つであるマウスフレンド細胞を分化誘導し、分化程度とヘテロクロマチン化の関係を電子顕微鏡により形態学的に観察するとともに、この過程におけるヘテロクロマチンタンパクの挙動を免疫組織化学的に調べた。目的達成のため、(1):フレンド細胞の分化における核タンパクの変化の検出、(2):ヘテロクロマチンタンパクの分散と一部構造決定、(3):分散したタンパクの特異抗体の作製、(4):ヘテロクロマチン内の発現されていない遺伝子の検索、を検討項目とし以下を行った。1)分化誘導日数と核形態の変化の関係誘導0日の細胞ではヘテロクロマチンはほとんど認められなかったが、4日目でヘテロクロマチンがやや増加した細胞が20%程度認められるようになり、6日目でヘテロクロマチンが著明に増加し特徴的な核構造を有する細胞が10%程度出現した。2)ヘテロクロマチンに局在するタンパク質の精製と抗体の作成ラット肝細胞核ヘテロクロマチンで作製した抗血清で、分化誘導細胞抽出液のドットプロットおよび免疫染色を行なうと、抗原の出現程度および含有細胞の頻度はいずれも顕微鏡による観察結果とよく一致していた、しかし電気泳動によるウェスタンブロットでは分子を同定できなかった。現在この抗血清を精製したものをプローブとし、肝細胞核より3種のヘテロクロマチンタンパクを精製している。
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