生体の微小血管(ウサギの小腸-腸間膜単離標本の微小血管)及び人工血管(各種の内径のガラス毛細管)に調製した赤血球浮遊液を灌流し、赤血球変形、赤血球-壁間間隙(血漿層)の厚さを観察・測定した。 1.赤血球膜のスペクトリンの酸化的重合化の影響:diamideで赤血球膜の骨格タンパク質であるスペクトリンを重合化すると赤血球のパラシュート変形はより細い血管でのみ認められ、赤血球がパラシュート型変形を起すためには高いズリ応力が必要であることが示された。また、パラシュート型変形を起す血管内径は赤血球の変形能とよく相関することが明らかになった。 2.赤血球浮遊メディウム内の赤血球集合物質の影響:デキストランT-70による赤血球の集合体形成が、単離ウサギ腸間膜の微小血管を流れる赤血球浮遊液の血漿層の厚みにどのような影響を及ぼすかを検討した。低ズリレオスコープ法で観察したデキストランによる赤血球集合体形成速度と微小血管内での血漿層の厚みには正の相関関係が認められた。 3.生体の微小血管及び人工血管での血漿層の厚さの比較:生体の微小血管及び人工血管のいずれの場合でも、血管内径の増加やヘマトクリットの減少に伴って血漿層の厚みは増加したが、人工血管では、赤血球流速が増すと血漿層の厚みが増加するという関係がより明瞭になった。 4.計算機実験(血漿層の厚さ、ヘマトクリット及び血管内径の関係):血漿層の厚み(Tpl、mum)とヘマトクリット(hct、%)および血管内径(D、mum)の関係について詳細に検討した結果、血漿層の厚みは[Tpl=6.72×log(hct)×log(D)+12.3×log(D)+5.52×log(hct)-9.43]によって近似できた。
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