研究概要 |
今年度の研究により,心筋症発症前のBio14.6心筋における膜機能蛋白質の膜分画への回収異常として探知される膜異常には,細胞膜裏打ち構造保持に関与する細胞骨格系タンパク質の異常が関与することが明らかにされた.特にジストロフィンにおいては、Bio14.6心筋ホモジェネートでは、対照ハムスター心筋含有量の約50%にもかかわらずミクロゾーム分画に対照の4倍以上回収されるという異常が検知され、両ハムスターでジストロフィンの細胞内分布には異常ないことから膜とジストロフィンとのassociationにBio14.6心筋では何らかの異常が存在すると結論された。そこでウサギ骨格筋において膜とジストロフィンとのassociationに関与するということで既にその存在が知られているジストロフィン結合糖蛋白質(43,50,150K,DAP)異常の有無を検討した。対照に比しBio14.6心筋ホモジェネートにおいて、43K DAP量の60%減少さらに50K,150K量の著しい(80-90%)減少が認められた。さらに,WGAビーズまたはジストロフィン抗体ビーズを用いた実験より,ジギトニン存在下に対照ハムスター心筋ジストロフィンは、50K,43K,150K DAP等との複合体として部分精製されるが、Bio14.6心筋ジストロフィンは各アフィニティービーズで上記3種の糖蛋白とは離れて回収されることを見いだした。正常細胞ではジストロフィンと同様,50K,43K DAPは細胞膜及びT管膜に存在したが,Bio14.6心筋の50K DAPは細胞膜に検出できなかった。しかし50K DAP以外の細胞内局在は両ハムスター間で大きな差はなかった。 以上今年度の成果より心筋症ハムスター心筋壊死の一因としてジストロフィン結合蛋白質50K DAPの細胞膜欠損によるジストロフィン-DAP複合体形成異常の存在が示唆された。
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