本研究は、加齢にともなう体温調節機能の低下に身体運動がどのような影響を及ぼすものかを調べるため、若齢および老齢ラットを用いて4ヵ月間のトレッドミル運動トレーニングを行わせ、環境温度負荷負荷時および運動負荷時の体温調節反応を年齢別に比較検討したものである。 得られた結果は以下のようである。 (1)運動トレーニングによって体重、最大酸素摂取量は増大した。 (2)環境温度の変動(5〜30℃)に対する体温変動は、老齢非運動トレーニングラットに比べて老齢運動トレーニングラットは体温変動の幅が小さくなる傾向を示した。しかしながら、個体差が大きいため統計的な処理はできなかった。今後は例数を増やすことが必要であると思われる。 (3)トレッドミル運動時(30min、10m/min)の体温変動は、老齢群の非運動トレーニングラットに比べて運動トレーニングラットは有意に体温上昇度が低下し(約0.5℃差)、若齢群の上昇度と差はなくなった。一方、若齢群においては運動トレーニングの効果はみられなかった。この結果は、老齢ラットは運動トレーニングにより最大運動能力が増大し、相対的運動負荷強度が低下した為であり、また若齢ラットはトレーニングの運動負荷強度が低かったため最大運動能力の増大があまりみられず、体温調節能に影響を及ぼさなかったものと思われる。 以上の結果から、加齢にともなう外的温熱負荷および内的温熱負荷に対する体温調節能力の低下を身体トレーニングはふたたび増大させる効果があることを示唆する。
|