研究概要 |
閉経期の婦人を悩ませているのぼせが、脳内に放出されるLHRHの体温調節系への作用により誘発される、という仮説を検証する目的で動物を用いて実験を行なった。まず、老齢および若年雄ラットの尾血管運動反応の差を検討した。実験はラットによって,血管運動が体温調節の主たる方法となる温熱的中性温域環境温(26℃)で行なった。この条件下では血管拡張の起こる深部温の閾値に老齢群,若年群間に有意な差はなかった。さらに24℃の環境温下でも実験を行なったが,老齢群,若年群とも尾血管は収縮したままであった。以上の結果より,雌ラットの尾血管運動調節には老齢,若年群間で本質的な違いは無いと結論される。Simpkins(1984)は老齢雌ラットは,若齢ラットでは尾血管が収縮しているような環境温下でも不規則な拡張を示すと報告している。彼らはLong‐Evans系,本実験はWistar 系を用いており、系統の違いによる影響は今後検討すべき課題である。次に無麻酔無拘束の自由行動ラットで、LHRHの受容体が密に存在する中隔野にLHRHを投与し、尾血管反応を調べた。その結果、尾血管が収縮している環境温下で、LHRHの投与により一過性の尾血管拡張が観察された。本研究では老齢雌ラビットをのぼせのモデルとして確立することはできなかったが、無麻酔の動物においても脳内LHEH投与により尾血管拡張反応が誘発されるという、当初の仮説を検証する重要な結果を得ることができた。今後更に、脳内におけるLHRHの作用機序および神経回路に関する研究を進めていく予定である。
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