求心性C神経線維のACTH増大反応への関与の有無を調べるために求心性C神経線維を変性させる処置として有名なキャプサイシン脱感作をラットに行ない、インターロイキン1あるいはプロスタグランディンEを全身に投与した。キャプサイシン一回投与後に観察される体温下降はキャプサイシン脱感作により消失するが、この様なラットをキャプサイシン脱感作ラットとして使用した。キャプサイシン脱感作ラットあるいはコントロールラットの静脈内にインターロイキン1あるいはプロスタグランディンEを投与すると血漿ACTH濃度は著明に上昇致した。しかしキャプサイシン脱感作をあらかじめ行なっておくとこれらのACTH増大反応は有為に抑制された。すなわち、インターロイキン1あるいはプロスタグランディンE静脈内投与によるACTH増大反応に求心性C神経線維の関与が示唆された。キャプサイシン脱感作ラットあるいはコントロールラットにケージ交換ストレスを負荷すると、ストレス開始後血漿ACTH濃度は著明に上昇した。さらに、このACTH増大反応はキャプサイシン脱感作により何ら影響を受けなかった。キャプサイシン脱感作ラットあるいはコントロールラットにCRFの少量を投与すると、投与後血漿ACTH濃度は著明に上昇した。しかし、この反応に関しては両群の間に差はなかった。一方、CRFの大量を投与するとキャプサイシン脱感作ラットはコントロールラットより有為に大きなACTH増大反応を呈した。すなわち、下垂体のCRFに対する感受性はキャプサイシン脱感作により減弱せず、むしろ大量のCRFに対しては増強することが分かった。 以上の結果より、全身投与されたインターロイキン1あるいはプロスタグランディンEは何らかの過程を経て求心性C神経線維を刺激し、これがACTH増大反応の中枢神経機構を活性化させるものと推察される。
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