徐波睡眠期とREM睡眠期との体温調節反応の違いはすでに多数報告されているが、その動的特性については検討されていない。そこで、暑熱負荷を急変させた時の体温調節反応を、特に徐波睡眠期とREM睡眠期との比較を中心に、発汗応答の差異について調べた。 1.方法 気温28〜32℃、相対湿度40%の人口気候室内で、披検者にはショートパンツを着用させ、寝具を用いずに簡易ベッドに背臥位をとらせ入眠させた。実験は午後11時に開始し、披検者が入眠したことを確認した後、翌朝覚醒するまで遠赤外線(370W)を前胸部下方から中腹部の範囲に上方より、1分照射1分遮断の周期で断続的に照射した。前頭部及び後頭部の脳波を脳波計を用いて連続記録し、周波数分析装置により周波数分析し、これをもとに眼電図、頤筋電図の記録と併せて1分毎に睡眠段階を確認した。高感度静電容量湿度計を用いた換気カプセル法により、非照射部位の局所発汗量を、サーミスタ温度計により鼓膜温、数カ所の皮膚温を連続記録した。レーザードップラー血流計を用いて発汗量測定部位及び指尖の皮膚血流量を連続記録した。データはすべて連続してコンピュータに取り込み、各パラメータの一周期中の変動を睡眠段階ごとに加算平均した。 2.結果 夜間睡眠中に断続的な暑熱負荷として腹部への赤外線照射を行ったとき、照射開始時の発汗量と照射に対する反応の大きさは覚醒時に比べ睡眠時、特に徐波睡眠期に大きかったが、反応パターンは睡眠深度の影響を受けなかった。発汗量の立ち上がり速度も睡眠中はその深度による差異は認められなかった。発汗の動的応答については睡眠深度による違いはなく、REM期においても発汗反応動態は変化しない傾向が観察されたが、REM期はばらつきが大きく、その特徴を断定するには至らなかった。
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