麻酔ラットを用いて、低酵素および高炭酸ガス刺激が胃運動に及ぼす効果とその神経性調節機序を検討した。 呼気中酸素濃度が6%となる低酸素刺激により、胃運動は抑制された。胃に分布する交感神経の遠心性活動を記録すると、低酸素刺激により活動が亢進した。胃に分布する交感神経の切断により低酸素刺激による胃運動抑制反応は減弱した。胃に分布する迷走神経活動は低酸素刺激により活動が亢進したが、迷走神経切断により低酸素刺激による胃運動抑制反応は影響を受けなかった。頚動脈洞の化学受容器からの求心性神経を切断すると、低酸素刺激による胃運動抑制反応は減弱した。以上の結果より、低酸素刺激による胃運動抑制反応は、頚動脈洞の化学受容器から交感神経を介する反射性反応であることが明らかになった。 一方、呼気中炭酸ガス濃度が10%となる高炭酸ガス刺激により胃運動は抑制された。この際胃に分布する交感神経活動は亢進したが、交感神経切断により高炭酸ガス刺激により胃の抑制反応は影響を受けなかった。従って、高炭酸ガス刺激による胃運動抑制反応は高炭酸ガス刺激が胃に直接作用したためと考えられた。
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