研究概要 |
糖尿病性心筋症におけるNa-Kポンプの役割を検討するために、streptozotocin処置により作製した糖尿病ラットから単一心室筋細胞を得て、パッチ・クランプ法によりNa-Kポンプ電流を測定した。糖尿病ラットは雄性wisterラット(9週齢)にstreptozotocin(45mg/kg)を静注して作製し、4週間後、著名な高血糖と体重減少を確認した後、実験に供した。対照は同じく9週齢の雄性wisterラットにクエン酸/リン酸bufferのみを静注して4週間後に実験に供した。13週齢における血糖値は、streptozotocin処置ラットが509±13mg/dl(mean±SE)、対照ラットが173±2mg/dlであった。両群ラットから人口呼吸下に心臓を取り出し、Langendorff灌流法によりコラゲナーゼ処置をし単一心室筋細胞を単離した。この細胞に常法に従いパッチ電極をあて、膜電流を測定した。Na-Kポンプ電流はGadsbyら(Nature,315:63,1985)の方法に従い測定した。Na、Ca、Kの各電流を適当な遮断薬を用いて抑制し、細胞外カリウム存在下に観察される時間非依存性の外向き電流を観察した。この電流はouabain(100muM)により抑制され、Na-Kポンプ電流であることが確認された。N-Kポンプ電流の電流密度は0mVにおいて、糖尿病ラットが0.22±0.03pA/pF(n=5)、対照ラットが0.23±0.04pA/pF(n=4)であり、有意な差を認めなかった。以上の研究により、糖尿病性心筋症病態においてはNa-Kポンプの機能は低下していないことが明かとなった。この結果は今まで報告のある生化学的検討の結果と異なるものであるので、今後はこの点についてさらに検討を進める予定である。
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