研究概要 |
アンジオテンシンII(AII)(1nM-3muM)はウサギの摘出心室筋標本においてalphaおよびbeta遮断薬存在下に濃度存在性に陽性変力作用(PIE)を発揮すること,AIIによるPIEは、サララシンおよびAT_1受容体選択的アンタゴニストのロサルタンによって抑制されることが示された.また,ウサギの心室筋スライス標本でAII(10nM-30muM)は濃度依存性にIP_1を増加させること,ホルボールエステルによりPIEとホスホイノシタイド代謝回転の促進が抑制されることから,AIIによるAT^1受容体活性化によるホスホイノシタイド代謝回転の促進が陽性変力作用に連関すること,Cキナーゼ活性化がPIEに関与することを明かにした.しかし哺乳類心筋ではアンジオテンシンIIのPIEには種差が大きいことが示唆されていた.心室筋標本体における[^<125>I]AIIの結合実験の結果,ウナギでは高親和性結合部位の存在が示され,B_<max>は25fmol/mg protein,Kdは1.3nMであった.[^<125>I]AII(0.25nM)の特異的結合をAIIとサララシンは濃度依存性に抑制し一相性の置換曲線を示したが,ロサルタンとPD123319(AT_2受容体選択的アンタゴニスト)では二相性の置換曲線となりAII受容体サブタイプの存在が示された.イヌ・ラットおよびフェレットの各動物の心室筋細胞破壊膜標本にも,[^<125>I]AIIの特異的結合部位が存在し,B_<max>はそれぞれ約76,21,37fmol/mg protein,Kdはそれぞれ約1.9,1.5,1.5nMであった.ウサギ心室筋のAII受容体にはAT^1およびAT^2受容体がほぼ等量存在するのに対して,イヌ・ラットおよびフェレット心室筋ではいずれもAIIにより濃度依存性にホスホイノシタイド加水分解の促進が認められた.以上の結果からAIIの陽性変力作用の種差の原因はホスホイノシタイド加水分解以降の共役過程によるものであると考えられる.さらに,ウサギ単離心筋細胞においてAIIは細胞収縮率の増加をおこしたが,細胞内カルシウムの上昇は明らかではなかったことから,Cキナーゼ活性化に連関して細胞内pHその他の何らかの変化を通して収縮力の変化をおこすと思われる.
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