ドーパミン受容体はD_1〜D_5のサブタイプに分類され、D_1およびD_5がD_1ファミリー、D_2〜D_4がD_2ファミリーに属する。また、中脳の腹側被蓋野はドーパミン性細胞の起始核であり、情動機能の中枢である。我々はこれまでに腹側被蓋野ドーパミン性細胞の活動はD_2受容体を介して抑制されることを報告したがこの抑制のイオン機構は不明であった。さらに、D_1受容体の機能も不明であった。そこで本研究ではこれらの点を明らかにする目的で電気生理学的実験を行ない、以下の結果を得た。 生体位ラットを用いた実験では、側坐核に投射する腹側被蓋野のドーパミン性細胞はマイクロイオントフォレ-シス法により投与したD_2アゴニストにより抑制され、この抑制効果は同時に投与したD_1アゴニストにより増強することを見いだした。また、この増強効果は同時に投与したD_1アンタゴニストにより拮抗された。 生体位における結果の詳細な機構を検討するために、ラット脳のスライス標本を用いて細胞内記録法およびパッチクランプ法による実験を行なった。この結果、腹側被蓋野ドーパミン性細胞は灌流液中に投与したD_2アゴニストにより過分極し、この過分極はカリウムイオンの透過性亢進によることを見いだした。さらに、D_1およびD_2アゴニストを同時に投与することにより活動電位の閾値が上昇することも明らかにした。 以上により、腹側被蓋野ドーパミン性細胞は、D_2受容体を介しカリウムイオンの透過性が高まることにより過分極し、この結果細胞活動が抑制されること、さらに、D_1およびD_2受容体が同時に活性化することにより、活動電位の閾値が上昇して、D_2受容体を介する抑制効果が増強されることが明らかとなった。
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