研究概要 |
1.グルタミン酸によるアストログリア膨化機構:これまでに申請者らは、グルタミン酸による培養アストログリア膨化に早い成分と遅発生成分のあること、そして膨化の発生にグルタミン酸受容体とその高親和性取り込み系の両者が関与することを認めている。本研究期間では、グルタミン酸アゴニストであるキスカル酸による膨化には遅発性成分のないこと、逆に取り込み系の基質であるthreo‐beta‐アスパラギン酸の膨化は遅い時間経過で生じることを認めた。このことは、グルタミン酸によるアストログリア膨化の早い成分は受容体の活性化が、遅発性膨化にはグルタミン酸取り込み機構の活性化がそれぞれ関与することを示す。 2.細胞外マトリックス構成成分発現への影響:グルタミン酸による膨化のラミニン、インテグリン発現への影響を検討したが、培養アストログリアのこれらマトリックス物質の産生はグルタミン酸処置で大きな変化は得られなかった。 アストログリアのエネルギー代謝の影響:グルタミン酸により膨化した培養アストログリアは、ミトコンドリアのATP産生能を反映するロ-ダミン123の取り込みを減少させた。シアン化ナトリウム、2,4,ジニトロフェノールの処置もこれと同じ作用を示した。このことは、グルタミン酸で膨化したアストログリアは、好気的エネルギー産生能が低下していることが考えられる。 アストログリアからのタウリン遊離:培養アストログリアからのタウリン遊離機構について検討し、グルタミン酸のほか、キスカル酸、threo‐beta‐アスパラギン酸など、膨化を惹起するものはタウリンの遊離を起こすことを認めた。タウリンは、神経の興奮に対して抑制的な作用を持つことがしられ、膨化によるこのタウリン遊離は、グルタミン酸の興奮毒性に対する病態生理的反応を示すかもしれない。成果の一部は、近く刊行予定である(Koyama et al., J.Neurosci.Res)。
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