チロシンキナーゼp72sykは、当初ブタの脾臓より精製、cDNAクローニングされた。さらにsykは血球系にのみ存在し、他の組織では存在を検出できなかった。しかし、ブタの血球系においてトロンビン、トロンボキサンA2等の刺激にて、sykの活性変化が検出でき、これらの細胞において重要な機能を担っていると考えられた。従って、p72sykのヒトの遺伝子の同定をこころみた。ブタsykのプローブを用い、ヒト脾臓cDNAライブラリーより、low stringencyにてcross hybridizationをおこない、最終的にindependentなクローンを2つ得た。それらのDNA配列、アミノ酸配列をみるとブタsykと約90%の相同性があったことより、ヒトsykのcDNAが取れたものと考えられた。しかし、このcDNAは完全長ではなかったので、再度ライブラリーをスクリーニングし、さらに4つのindependentクローンを得、現在解析中です。尚、完全長cDNAがとれていないため、疾病との関係に着手できなかったが、その前段階として抗体を作ることにした。部分長cDNAの一部を融合タンパク質として大腸菌に作らせ、それを抗原としてモノクローナル抗体の作製を試みたところ、幸いほぼ有用な抗体が得られるものと考えている。したがって、今後は疾病との関わりにも着手できうるし、ま完全長cDNAがとれれば、FISH法にて染色体上の位置決めを行ない疾患に関しての有用な情報が得られるものと期待される。 syk関連遺伝子の同定に関して、血球系以外の組織である脳(全脳)よりRNAをとりノザンブロットをおこなったが、結果は否定的であった。しかし、部位(海馬、小脳等)別にRNAを取ったり、あるいはin situ hybridization法にて再検したいと考えています。
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