N‐アセチルグルコサミン転移酵素V(GnT‐V)は糖タンパク質アスパラギン結合型糖鎖合成を触媒する酵素の1つであり、種々の癌で活性化され、細胞表面の糖鎖癌性変化に関わると考えられている。特に、GnT‐Vの形成する枝分かれ構造をもつ糖鎖の出現は癌転移能との深い関連が明らかになっている。既に、我々はGnT‐Vをヒト肺癌細胞種細胞株QGから精製することに成功している。そこで、本年度、我々は、精製したヒトGnT‐Vの部分アミノ酸配列の情報をもとにcDNAクローニングを行った。その結果、ヒトGnT‐Vは741アミノ酸から成り、最近、他のグループから報告されたラットGnT‐Vとの比較から核酸レベルで88%、アミノ酸レベルで97%のホモジ-があることが明らかになった。GnT‐Vは、これまで報告されている他の糖転移酵素同様、N未端側に膜貫通領域と思われる疎水性アミノ酸に富む部分をもつII型膜結合タンパク質であろうと予想されている。GnT‐Vには6ヶ所のアスパラギン結合型糖鎖付加サイとがあり、このサイトは、ヒト、ラット間で保存されている。また、他のN‐アセチルグルコサミン転移酵素も含め、これまで報告されているタンパク質とのアミノ酸レベルでのホモロジーは認められない。さらに、我々は、GnT‐V遺伝子のクローニングにも成功した。そこで、得られた遺伝子を用いてGnT‐Vの染色体マッピングを行ったところ、ヒトGnT‐Vは染色体2q21に局在するsingle copy geneであることが明らかになった。現在、GnT‐V遺伝子構造の解析中であるが、これまでわかっているだけで、GnT‐V遺伝子は80Kbp以上に及び、少なくとも11以上のエクソンより成ることが明らかになっている。今後、5'、プロモーター領域な解析と、GnT‐V遺伝子発現機構の解明を引き続き行っていく予定である。
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