研究概要 |
この研究の目的は、薬物代謝型P-450IIDサブファミリーの発現と疾患との関係を解明することであり、昨年度までに、シトクロムP-450IID酵素活性の組織分布、及びシトクロムP-450IIDの遺伝子異常がパーキンソン病と有意に関係していること等を明らかにしてきた。 当年度は、シトクロムP-450IID遺伝子の突然変異が肝臓疾患、肺ガン等にどういう影響を及ぼすかを明らかにする実験を行った。 肝疾患患者72人(慢性肝炎29人,肝硬変20人,肝細胞ガン12人,自己免疫性肝炎5人,原発性胆汁性肝硬変6人)、肺ガン患者21人の血液よりDNAを抽出し、シトクロムP-450IID6遺伝子をPCR法で増幅し、デブリソキンの代謝能力に関与している突然変異、及び、我々が新しく発見したエキソン6内の突然変異について遺伝子型を決定し、健常者6人と比較した。 これらの患者では、デブリソキンの代謝型(EM)/代謝不全型(PM)の多型には差はみられなかったが、296番目のアミノ酸残基の変異(Arg→Cys)について、ヘテロ接合の割合が肝炎患者で25.0%(18/72)、肺ガン患者で9.5%(2/21)、コントロールの健常者で16.1%(9/56)であり、コントロールに比べて肝炎患者で1.6倍高く、肺ガン患者で0.6倍と低かった。 患者の数がまだ少ないので、はっきりしたことは明かではないが、パーキンソン病と異なり、ヘテロ接合の割合が肝炎患者で多くみられる傾向にあった。 これらのことより、シトクロムP-450IID6変異遺伝子が肝疾患の慢性化の過程に何らかの関与をしている可能性が示唆された。 さらに患者の数を増やして解析するとともに、パーキンソン病以外の他の神経疾患についても解析を行う予定である。また、これらの疾患患者について、新たにシトクロムP-450IIC遺伝子の突然変異についても解析を計画している。
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