研究概要 |
1.本研究において我々は、様々な分化段階の細胞から成る精巣をモデルにして、細胞の増殖、分化といった段階に異なったPKC分子種が関与するのではないか、という仮説の検証を試みた。まず、ノーザンブロット解析の結果、PKC分子種の中でnPKCdeltaとnPKChthetaの発現が精巣において非常に高いことが分かった。また、両分子種の精巣におけるmRNAの大きさは、他の臓器のそれに比べて小さく、精巣特異的スプライシング機構の存在が示唆された。PCR法を用いて精巣由来のnPKCdelta,thetaのcDNAをクローニングして調べたところ、両分子種共に蛋白コード領域は短くなっておらず、mRNAのサイズが小さくなっているのは、蛋白非コード領域のスプライシングによるものと考えられた。nPKCdeltaは、in situハイブリダイゼーションの結果、減数分裂後の前期精子細胞に特異的に発現が認められた。エルトリエーターで精巣の構成細胞を分画した後のノーザンブロットでも同様の結果が得られた。従って、nPKCdeltaは精巣において半数体特異的に発現していることが示唆された。一方nPKCthetaは、theta特異的抗体を用いて免疫組織染色を行ったところ、アンドロゲンを分泌する間質細胞、ライディッヒ細胞特異的に強い染色が見られた。精巣におけるステロイドホルモンの合成にPKCが関与しているという報告があり、今後ライディッヒ細胞の培養細胞を用いて、nPKCthetaとステロイドホルモンの合成の関係について調べていく予定である。 2.PKC分子種の組織特異的発現機構を解析するために、これまで我々が上皮組織での発現が高いことを示してきたnPKCetaの5'上流のゲノムDNAのクローニングを試みた。その結果、5'上流のプロモーター部分を含む領域のクローニングに成功し現在解析中である。
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