ヒトを含め全ての真核生物にミトコンドリアは存在し、その発現が転写レベルで厳密に調節されていることを明らかにした。まず、ヒトのATP合成酵素のalphaサブユニット遺伝子の構造を決定し、その転写の組織特異性を示し、さらに同酵素betaサブユニットの遺伝子のPboxおよびSboxと相同な配列が存在し、協調的な発現に関与している転写調節因子が存在する可能性を明らかにした(論文2)。次に、核におけるrRNAのプロセシングとミトコンドリアにおけるゲノム複製にかかわるRNA(MRP RNA)の遺伝子の転写調節領域(Box I)を決定した(投稿中)。ミトコンドリアは卵形成初期に爆発的に増加するが、このとき、MRP RNAは高レベルで転写されており、その転写調節領域への核タンパク質の結合はこの転写量に対するように変動した。また、MRP RNA遺伝子には未知のCキナーゼ遺伝子が隣接している。報告者は既にシロイヌナズナの葉緑体H^+輸送性ATPase遺伝子atpC2が液胞H^+輸送性ATPase遺伝子に近接していることに加えて、本年度は同種小胞体局在性オーキシン結合タンパク質遺伝子が小胞体で機能するSRPの7SLRNA遺伝子と近接していることを明らかにしており(論文1)、これらのことから、MRPRNA遺伝子と近接するCキナーゼ遺伝子も卵形成またミトコンドリア増殖になんらかの役割を担っているらしいことを明らかにした。
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