研究概要 |
本研究計画の目的は、最近高沢らが膵ランゲルハンス島beta細胞で見いだした新しい細胞内情報伝達物質であるcyclic ADP-riboseの生合成機構を解明するためにcyclic ADP-ribose合成酵素(ADP-ribosyl cyclase)を分離・精製し、その性質を明かにすることである。具体的には、(1)まず、cyclic ADP-ribose合成酵素活性の強いアメフラシ卵精巣よりcyclic ADP-ribose合成酵素を分離・精製する。(2)次に、精製アメフラシcyclic ADP-ribose合成酵素の性質を参考にラットランゲルハンス島,肝臓などから哺乳動物cyclic ADP-ribose合成酵素を分離・精製する。これにより哺乳動物cyclic ADP-ribose合成酵素の実体が初めて明かにされる。平成5年度の研究は、当初の計画以上に進行し、以下のとうり期待された成果が得られた。 1.アメフラシ卵精巣抽出物を遠心分画法、イオン交換,ゲルろ過クロマトグラフィー,HPLCなどで分画し、各画分を高沢らが確立したニコチン酸アミドの遊離とcyclic ADP-riboseの精製を指標にしたcyclic ADP-ribose合成酵素活性測定法で測定しアメフラシcyclic ADP-ribose合成酵素を分離・精製した。 2.ラット膵ランゲルハンス島,肝臓などの抽出物を1.での経験をもとに遠心分画法,カラムクロマトグラフィー,HPLCなどを組み合せて分画し、哺乳動物cyclic ADP-ribose合成酵素を分離・精製を行った。 3.2.の結果からCD38が哺乳動物cyclic ADP-ribose合成酵素である可能性が考えられたのでPCR法によりヒトCD38のcDNAを分離して発現ベクターに組み込みCOS-7細胞で発現させたところ、ヒトCD38蛋白がcADPR合成酵素活性を有することが示され、CD38が高等動物のcADPR合成酵素であることが初めて明らかとなった。また、CD38にはcADPR分解酵素活性があることも明かにした。
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