研究概要 |
MELAS(mitochondrial mvopathy,encephlopathy,lactic acidosis,and stroke-like episodes)は、筋力低下・痙攣発作・頭痛・嘔吐などの症状を呈し、脳梗塞様発作を特徴とする小児科領域に発症することの多いミトコンドリア脳筋症のひとるで、ミトコンドリアDNA(mtDNA)のtRNA(Leu)をコードする部位の点変異が2種類報告されている。今回、我々は、典型的なMELASの1部検例において、mtDNAの22種類のtRNAの全領域にわたり直接塩基配列を決定した。これまでの報告には認められなかった3256番めのCからTへの点変異が検出された。また5601番と12311番の点変異も同時に検出された。症例の父、母、弟についての同部位の点変異を直接塩基配列決定とAllele-specific oligonucleotideを用い、変異の有無を検索したところ、3256番は、MELAS症例のみが正常mtDNAと共存するheteroplasmyの状態をしめしており、他の変異は、母と弟に存在したが、症例も含めてすべてhomoplasmyの変異であり、以上の結果より、3256番の点変異がこのMELAS発症の原因と考えられた。なお、症例の剖検骨格筋のミトコンドリア電子伝達系酵素複合体I、II、III、IVのうちI、IVの活性低下が確認されている。 これまでのMELASの点変異の報告とあわせると、tRNA(Leu)UURにおける点変異は、MELASの原因部位として重要であると考えられた。
|