既報のラット腎膜結合性副甲状腺ホルモン分解酵素のラット生体内局在と、酵素の糖鎖の有無、膜結合アンカー領域の有無を検討するため、精製酵素を家兎に免疫し、抗体を作製し、これを用いて免疫組織的実験を行なった。本酵素はラット各臓器のうち、腎近位尿細管刷子縁と小腸微絨毛のみに存在するmicrovillar membrane endopeptidaseであることが判明した。また糖鎖を約11%有し、膜結合アンカー領域を有するectoenzymeであった。これらの諸性質は他の腎膜endopeptidaseであるmeprinと類似する。私共の精製酵素はN端27残基までアミノ酸配列が判明している。meprinもそのN端アミノ酸配列が論文に発表されていたが、それらと本精製酵素とのアミノ酸配列には相違がみとめられた。しかし、最近meprinのcDNAクローニングによる全一次構造が発表されたが、その結果と比較すると本精製酵素のN端アミノ酸配列はmeprinと同一であり、本酵素はmeprinであると判明した。本酵素は私共の既報の結果では、腎膜分画の副甲状腺ホルモン(PTH)分解活性の大部分を占めていた。そこでmeprin(=本酵素)のPTH分解における役割を検討した。meprinのPTH分解産物とラット腎膜分画のPTH分解産物をHPLCと蛋白シークエンサーを用いて解析すると両者の大部分が一致した。すなわちmeprinは腎膜PTH分解において内在性蛋白としても主要な役割を担うことが示され、今まで不明であったmeprinの生理的意味が明らかとなった。
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