培養細胞を血清などの細胞増殖因子で処理したり、また、多くの細胞の癌化に伴って、1型のグルコーストランスポーター(GT1)遺伝子の転写が増加し、それによりGT1mRNAは増加する。数の増加した細胞膜上のGT1により、細胞はより多くの糖を取り込み、細胞増殖のエネルギーとして使用する。我々はマウスのGT1遺伝子をクローニングし、遺伝子の3kb上流(エンハンサー1)と、第2イントロン中(エンハンサー2)の2ヶ所に血清添加及び、癌遺伝子のrasやsrcの産物により、活性化されるエンハンサーを同定した。そこにはSREやTREと相同性の高い配列が存在していたが、この領域だけでは転写活性化のうちの一部分しか説明できない。上流および下流から削った変異体を作成することにより、エンハンサー1の領域を約300bpにせばめた。NIH3T3培養細胞からの核抽出液を調整し、FootPrintを実施したところ、この300bpの領域にはFootPrint陽性領域が7ヶ所見いだされた。これらのFootPrint陽性領域やSRE相同配列を欠失した変異体では転写活性化能が低下した。精製したc-juu蛋白とSP1蛋白を加えたFootPrintにより、7ヶ所のFootPrint陽性領域のうち5ヶ所にc-juu蛋白が2ヶ所にSP1蛋白が結合することがわかった。また、精製したSRF蛋白を加えたFootPrintを行ったところ、NIH3T3培養細胞からの核抽出液でははっきりとしたFootPrint陽性領域としては見えなかったところにSRF蛋白が結合することがわかった。これらより、エンハンサー1では5ヶ所のAP1結合部位(TRE)と2ヶ所のSP1結合部位(GC-box)そして1ヶ所のSRF結合部位(SRE)が協同して転写活性化を行っていることがわかった。現在、エンハンサー2の解析も進めている。
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