私共の研究室では低分子量G蛋白質Rab3Aを発見し、その機能と活性化機構について解析を続けている。この低分子量G蛋白質はシナプス小胞に大量に存在しており、シナプスにおける神経伝達物質の放出に関与している可能性が強い。私共の研究室では、Rab3Aの標的蛋白質としてRabphilin-3Aを同定しているが、まず、本年度の研究でこの標的蛋白質を精製し、その一次構造を決定した。Rabphilin-3Aはシナプス小胞に局在していた。分化後のPC12細胞(ラット褐色細胞腫細胞)では、Rabphilin-3AとRab3Aが両方存在している神経様突起でのみカテコールアミンの分泌反応が起こった。Rabphilin-3AとRab3Aが存在しない神経様突起ではカテコールアミンの分泌反応は起こらなかった。このことから、Rabphilin-3AはRab3Aの標的蛋白質として、Rab3Aと共に神経伝達物質の放出反応を制御している可能性が強い。次に、Rabphilin-3Aには、N末端側にRab3Aと特異的に結合する領域と、C末端側にCa^<2+>とセリンリン脂質を結合する、機能的に異なった2つの領域が存在することを明らかにした。このことから、Rabphilin-3Aは神経終末においてシナプトタグミン同様Ca^<2+>センサーとして機能している可能性が強い。さらに、Rabphilin-3Aが、Rab3Aの内在性GTPase活性を弱く促進するとともに、Rab3AのGTPase活性促進蛋白質(Rab3A GAP)の活性を強く抑制することを明らかにした。このことから、Rabphilin-3AはRab3Aがその機能を遂行するまでRab3Aを活性型に保持していると考えられる。このように、本研究は予想以上に進展し、当初の目的はほぼ完全に達成することができた。
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