我々は、かねてよりプロスタグランジン(PG)F_<2alpha>受容体の分子構造を明らかにするためにそのcDNAクローンの単離を試みてきたが、最近既知のプロスタノイド受容体の塩基配列を基にしてDNAポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)及びクロスハイブリダイゼーション法等を用いてウシ黄体mRNAよりPGF_<2alpha>受容体のcDNAクローンの単離に成功した。2.2kbpの長さを持つこのcDNAクローンは、362アミノ酸の蛋白質翻訳領域を含み、他のプロスタノイド受容体同様典型的な7回膜貫通型構造を有していた。このcDNAクローンを動物培養細胞(COS細胞及びCHO細胞)中で発現させると[^3H]-PGF_<2alpha>に対する特異的な膜結合活性を示し、さらにアフリカツメガエル卵母細胞において典型的なCa^<2+>依存性Cl^-チャンネル電位の変化を示した事等から、このcDNAは機能的な受容体蛋白質領域を有するクローンであることが同定できた。更にノーザンハイブリダイゼーション及びIn Situハイブリダイゼーション等によりこの受容体mRNAの組織分布を調べると、従来の生化学的知見と同様にウシにおいては黄体組織に著しく局在することが判明した。現在このcDNAクローンを用いて、性周期及び妊娠各期のウシ黄体組織におけるPGF_<2alpha>受容体mRNAの発現量の変化を詳細に調べ、生殖生理現象におけるPGF_<2alpha>受容体の役割を明らかにしつつある。更にウシ及びヒトPGF_<2alpha>受容体のゲノムDNAを単離、解析することによりその転写調節に関与するDNA領域及びその転写調節因子を同定し、分子レベルで受容体遺伝子の発現調節のメカニズムを明らかにする予定である。
|