内視鏡的に切除されたホルマリン固定3日以内の大腸腺管腺腫110病変(6.5±4.0mm)と大腸早期癌56病変(粘膜内癌45病変:11.1±5.0mm、sm癌11病変:11.6±4.9mm)を対象として、異常p53蛋白発現頻度と様式を免疫組織科学的(抗p53モノクローナル抗体PAb1801を用いたSAB法)に検索し、以下の結果を得た。 1.大腸腺腫の異常p53蛋白発現について 腺腫の83.6%(92/110)に異常p53蛋白発現細胞の出現を認めた。その出現様式は、91.3%(84/92)が少数散在性で、集簇性に同異常蛋白発現細胞が出現した病変は8.7%(8/92)のみであり、び慢性に同細胞が出現した病変はなかった。少数散発性に出現した同蛋白異常発現細胞はその大部分が腺腫表層から200mum以内に存在し、同部はKi-67染色でみた腺腫の増殖細胞高密度領域(増殖帯)に一致しており、少数散発性発現は細胞増殖に関係したwild type p53蛋白の過剰発現と推定された。 2.大腸腺癌の異常p53蛋白発現について 腺癌(全て高分化型)の94.6%(53/56)に異常p53蛋白発現細胞の出現を認めた。その出現様式は腺腫と異なり、62.3%(33/53)が集簇性〜び慢性に出現しており、mutant type p53蛋白の過剰発現と考えられた。 3.腺腫・癌の組織異型度と異常p53蛋白発現について 腺腫では、低異型腺腫領域の97.7%(85/87領域)が少数散在性であったのに対し、高異型腺腫領域で少数散在性では10.0%(4/40)に集簇性発現が見られた。一方癌では、低異型度癌領域の36.8%(14/38領域)が散在性、63.2%(24/38)が集簇〜び慢性、高異型度癌では14.8%(4/27)が散在性、85.2%(23/27)が集簇からび慢性発現様式であった。
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