研究概要 |
ATLLの悪性リンパ腫は、病理組織的にも特異的であり、また表現型でも、多くのものは、helper/inducer(CD4)陽性であり、T cell receptor遺伝子の再構成を伴う T細胞性の悪性リンパ腫である。またモノクロナールなATLウイルスの組込みが確認されている。これまで我々は、ウイルス性リンパ節炎様の組織像をとる非腫瘍群(lymphadenitis state),ホジキン様の組織像をとる前段階群(incipient state)、典型的な悪性リンパ腫(neoplastic state)でも、ウイルスの組込で部分欠損をとる群などを報告してきたが、これらの群の相互関係を免疫染色法を用い、CD3(TCR beta)の Vbeta familyの発現に偏りがあるかを調べた。使用した抗体は、TCR VbetaとTCR Valphaの一部のファミリーに対する抗体で、betaV5(a),betaV5(b),betaV6(a),betaV8(a),betaV12(a),alphaV2(a),alphabetaV(a)である。さきの3群(lymphadenitis,incipient,neoplastic state)のリンパ節は、一様にCD4陽性細胞より構成されていいたが、neoplastic stateの多くのリンパ節では、ほとんどの細胞がalphaV2に陽性があったが(欠損群、非欠損群の間では差はなかった)、一方lymphadenitis stateでは、ATLA陰性の非特異的リンパ節炎と同様に、alphaV2陽性細胞は少数であった。incipient stateでは3例中1例がalphaV2に陽性であった。以上のことより、レトロウイルスのHuman immuno deficiency virus(HIV)にて起こっているスーパー抗原の選択が、HTLV-Iでも腫瘍化の段階で同様に起こっている可能性が示唆された。
|