研究概要 |
Palmiter博士より供与されたエクスプレッションベクターpAlb-hGHを導入遺伝子の作製に使用した。このpAlb-hGHは、マウスアルブミンのエンハンサー(-12〜-8.5kb)およびプロモーター(-0.3〜0kb)の制御下に、レポータージーンとしてヒト成長ホルモン遺伝子を組み込んだPUC系プラスミドであり、マウスにおいて導入遺伝子として使用した場合、レポータージーンの肝特異的発現が十分に期待でき得るものである。まず、pAlb-hGHのhGH翻訳領域をpolyA付加シグナルを残した形で取り除き、この部分に新たに我々の研究室でクローニングした5^'側、3^'側の非翻訳領域を含む日本株HCV-Nの全長遺伝子を組み込み、PUCベクター部分を取り除いて導入遺伝子を作製した。この導入遺伝子を、C57BL/6の受精卵に一個につき、約1000コピーずつ注入した後、一晩培養し、2細胞期に入ったもののみ選別してICR系偽妊娠マウスに卵管移植し、自然分娩或は帝王切開によって現在までに59頭の産仔を得ている。このうち、既に離乳している20頭のTailDNAについて導入遺伝子の有無をPCR法によって調べたが、導入遺伝子の存在は確認されなかった。現在も、約50個の受精卵に週2回のマイクロインジェクションを施行中である。一方、このように作製したトランスジェニックマウスでは、胎児期からのHCV抗原産生により、HCV抗原に対し免疫寛容となっていることが予測されるので、HCV抗原で感作した同系正常マウス免疫系の移入による肝炎病態モデルの作製を考えている。その予備実験としてマウスの各系統間(C57BL/6J,C3H/He,BALB/c)におけるHCVのコア蛋白に対する抗体産生能をELISA法により調べてみた。その結果、今回トランスジェニックマウス作製に使用したC57BL/6において最も高い抗体産生能が観察され、肝炎病態モデル作製に十分な免疫応答があるものと予測された。
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