我々はこれまで、DouryuラットはF344ラットに比べ子宮内膜腺癌の自然発生率が高く、その発生には内分泌異常が関与していることを報告してきた。ラット子宮癌の発生機序を解明する為の基礎的研究の一環として、子宮癌好発系Donryuおよび嫌発系F344ラットを用いて、子宮内膜における細胞増殖動態に及ぼす性周期及び加齢の影響を比較、検討した。その結果、Donryu及びF344ラットとも正常性周期に伴う細胞動態の変化が見られ、若齢時における性周期の各ステージでの細胞増殖には両系統間に差が見られなかったが、26週齡以降Donryuラットでは、持続発情の出現と共に内膜上皮の細胞増殖が亢進する傾向が見られた。子宮内膜細胞動態に及ぼす内分泌異常の影響をより詳細に検討するために、生後3日目のDonryuラットの皮下にテストステロンプロピオネート0.05mg/匹を注射して、無排卵ラットを作成し、子宮内膜細胞動態に対する加齢とエストロゲン投与の影響を検討した。実験はまだ進行中であるが、現在までの観察結果では、無排卵ラットの子宮内膜細胞増殖は同週齡の無処置ラットのそれに比べて高く、E2ペレットを皮下埋没することにより細胞増殖がさらに増加した。以上のことから、子宮内膜の細胞増殖能は内分泌異常、特にエストロジェンの高値と相関していることが示され、このことはDonryuラットにおける子宮癌の高率な自然発生と関連した所見と考えられた。
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