研究概要 |
本研究では,チロシンリン酸化を介する中枢神経系および免疫系細胞の活性化,分化の制御機構をチロシンホスファターゼ(PTP)の側から解明することを最終目的として,PTPの中でも細胞間相互作用や細胞内情報伝達において,より重要と考えられる膜結合型PTPの遺伝子クローニングと得られた遺伝子についての構造および発現の解析を行ってきた。今年度は,これまでにマウス脳cDNAライブラリーより単離された新たな膜結合型PTPであるMPTPdeltaについて検索を進め,以下の結果を得た。 (1)MPTPdeltaの細胞外領域の一部を大腸菌でglutathione S-transferase(GST)との融合蛋白質として発現させ,これを抗原としてウサギを免疫し抗血清を得た、この抗血清を用いたウエスタンブロット法で,マウスの脳の可溶化物から約210kDaのMPTPdelta蛋白質を検出しえた。 (2)MPTPdeltaの細胞内領域全体を(1)同様にGSTとの融合蛋白質として発現させた大腸菌の抽出物には,対照群に比して有意のPTP活性が認められた。 (3)胎生16日目から出生後6週目までに相当するマウスの脳におけるMPTPdelta遺伝子の発現をRT-PCR法により検索したところ,分化段階特異的に発現するアイソフォームが存在することが判明した。 以上の結果は,日本癌学会,日本免疫学会,日本分子生物学会および日本病理学会にて発表済である。
|