多種類の細胞において、カルシウム依存性蛋白質燐酸化酵素が重要な役割を果たしていることが明らかにされている。マラリア原虫では赤血球内寄生に伴い細胞内カルシウム濃度が上昇すること、膜蛋白質の燐酸化が増加すること等が既に報告されている。従って、カルシウム依存性蛋白質燐酸化酵素がマラリア原虫の赤血球内感染機構において重要な機能を担っていることが示唆される。しかし分子レベルでマラシア原虫のカルシウム依存性蛋白質燐酸化酵素に対する検討を加えた報告は今までなかった。 今回申請者は、カルシウム依存性タンパク質燐酸化酵素のうちプロテインキナーゼCに注目し、分子構造が既に明らかにされている数種の生物のプロテインキナーゼCの一次構造を比較し、相同性の高いcatarytic domain部分のアミノ酸配列をもとにオリゴヌクレオチドプローブを作成し、PCR法にて、マラリア原虫(Plasmodium Yoelii)DNAの遺伝子増幅を行なった。その結果、約870塩基のPCR産物を得た。塩基配列からそのPCR産物はプロテインキナーゼC様の蛋白質(catarytic domainの一部)をコードするDNAである可能性が高いことがわかった。さらにこのPCR産物をプローブとし、マラリア原虫(Plasmodium yoelii)DNAのSorthern blot hydridizationを行ったところ、確かに一本のDNAバンドを認め、このPCR産物がマラリア原虫(Plasmodium yoelii)DNA由来であることを確認した。さらに、マラリア原虫の遺伝子ライブラリーを作製し、PCR産物をプローブとして、ライブラリーをスクリーニングし、本蛋白質をコードする遺伝子をクローン化した。現在、本蛋白質の全一次構造を決定中である。今後、昆虫発現ベクターを用い、本蛋白質を発現させ、その酵素学的性質を解明していく予定である。
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