抗CRAR抗体はアメーバの組織内感染が成立した段階で血清中に出現すると推定されるもので、慢性アメーバ性大腸炎の患者血清中に高率に検出されるが、無症候感染者では原則として検出されない。本研究の目的の1つはCRAR抗原の精製と特異抗体作成であるが、その状況は以下の通りである。赤痢アメーバ可溶性分画に等量の飽和硫安を加え、遠沈上清を回収。pH8にて陰イオン交換クロマトグラフィー、及びゲル濾過にて精製。SDS-PAGEにて電気泳動を行ったところ、タンパク染色にて分子量30kD相当の位置にバンドを認めた。イムノブロットを行ったところ同位置に抗原を検出した。CRAR抗原はゲル内沈降反応で慢性アメーバ症患者血清との間に明瞭な沈降線を形成するものであるが、電気泳動では可溶性タンパクの1%以下の成分であろうと推定された。特異抗体の作成は未だ成功していない。 抗PHEX抗体は病原性アメーバの腸管内感染が成立した段階で血清中に出現すると推定されるもので、急性発症したアメーバ症患者血清で高値を示し、無症候感染者でも高率に検出される。PHEX抗原の精製に関しては以下の通りである。赤痢アメーバ粗抗原の遠心沈澱に中性トリス緩衝液、および等量のフェノールを加え、水層を回収。等量のエタノールを加えた後、遠心沈澱を回収。この調整法によって核酸の混入は除去することができた。イムノブロット法は、7.5%ポリアクリルアミドゲルを用いた場合には陽極先端に明瞭なバンドを確認したが、12%ゲルを用いるとバンドは広がり不明瞭となった。各種の溶媒を用いて薄層クロマトグラフィーを行い硫酸で検出を行ったが、PHEX分画の主成分は原点から移動しなかった。
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