研究概要 |
1.Trypanosoma cruziの昆虫体内期(epimastigote)を無血清培地であるGIT培地を用い大量に培養した。 2.錘鞭毛期(trypomastigote)、無鞭毛期(amastigote)については、ヒト由来培養細胞株であるHeLa細胞を宿主細胞とした感染モデル系を用い、各発育段階の原虫を大量に得る条件を検討した。まず、大量培養する際の培養容器を25cm^2、75cm^22種類のフラスコについて比較したところ、25cm^2を用いた時の方が、効率よく原虫を集められることがわかった。また、原虫感染後4日目にはamastigoteが増え、6-7日目に培養上清中にtrypomastigoteが多く出現したので、感染後の日数を変えて各発育段階の虫体を集めた。 3.2で得られたtrypomastigoteと宿主細胞とをそれぞれ分離する目的で、ショ糖密度勾配、またはPercoll(ファルマシア)を用いて遠心した。その結果、50%Percollを用い25000rpm、2時間遠心した時に原虫と宿主細胞をよく分離することができ、さらに、死細胞を分けることができた。しかし、細胞内のamastigoteを宿主細胞と分離するのは困難であり、今後の検討を必要とした。 4.上記で得られたHeLa細胞、epimastigote、およびtrypomastigoteのホモジネートについて2次元電気泳動を試みた。epimastigoteは9M尿素を用いても可溶化されにくいタンパク質が多く、はっきりとしたスポットが少なかった。そのため、epimastigoteとtrypomastigote各々の発育段階に特異的に発現するタンパク質を同定することはできなかった。現在、epimastigoteの可溶化の条件を検討している。 以上、当初の研究計画1,2は達成され、3,4に一部課題を残した。全体としておよそ70%が達成された。
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