赤痢菌VirG蛋白のNおよびC末端のアミノ酸配列に対し、合成ペプチドを用いて抗体を作製した.菌体をトリプシン処理した前後の変化を上記抗体を用いたイムノブロットで解析すると、外膜蛋白であるVirGはN末端が菌体外に、C末端が外膜内に存在する一極構造を示すことが判明した.VirG蛋白をドデシル硫酸ナトリウム(SDS)で可溶化し、セファクリルS-300によるゲル漉過、ヒドロキシアパタイトによる吸着クロマトグラフィーにより精製した.SDSを除去した後、この精製蛋白とF-アクチンとの結合を超遠心によるcosedimentation assayにより調べた.VirGは濃度に依存してF-アクチンと結合することが認められた.さらにF-アクチンと反応させた後、negative染色による電子顕微鏡で観察すると蛋白がアクチン束に結合する像がみられた.pyrenを結合させたアクチンは重合すると蛍光強度が増加するが、これを用いてVirGとの関係を調べた.VirGはアクチンの重合および脱重合に関与していなかった.しかし、F-アクチンと結合した場合、その安定化に寄与していた.赤痢菌は上皮細胞に侵入し、細胞内拡散する.この時、菌体の一極にアクチン束の凝集がみられる.これにVirG蛋白が関与しているが、VirGはアクチンを重合するのではなく、F-アクチンを菌体に結合させ、アクチン束の形成を促す場を提供するのではないかと考えられる.以上の内容は現在投稿中である.
|