ウェルシュ菌のalpha毒素は、致死、壊死、溶血、ホスホリパーゼC(PLC)活性を有し、本菌によるガス壊疸の起病因子であると考えられている。本毒素は、分子内にZnを有し、このZnが、活性発現と密度に関連していると推察されている。今回、alpha毒素遺伝子を用いて部位特異変異法によりZnのリガンドであると考えられている126、136、148番目のヒスチジン(His)残基を中性アミノ酸であるグリシン、アラニン、ロイシンに置換したH126G、H136A、H148Lを作成し、構造と毒素活性の関係を検討した。作成した変異alpha毒素とインタクト毒素は枯草菌で発現させ、精製した。これらの変異alpha毒素とインタクト毒素の活性を比較するとH126Gは、溶血、Egg yolk、致死、スフィンゴミエリンナーゼ活性が、インタクト毒素の1/50〜1/100に減少し、H136AとH148Lは、いずれの活性も全く示さなかった。一方、3種類の変異毒素とインタクト毒素はオクタロニ-法で、抗alpha毒素血清との間に、一本のfuseした沈降線を形成し、また、トリプシンによる部分加水分解でも、変異毒素とインタクト毒素は、SDS-PAGEで同じ切断パターンを示した。これらのことから、これらのアミノ酸残基の変異によるalpha毒素の構造変化は、ほとんどないと考えられる。次に、各変異毒素とインタクト毒素のZn含量を原子吸光分光度計を用いて測定すると、H126G、H136G、そして、インタクト毒素は、分子当り、2個のZnを含有するの対して、H148Lは、1個のZnのみを含有することが判明した。以上から、置換された126、136、148位のHis残基は、いずれも、毒素活性発現に重要であることが判明した。さらに、148位のHis残基は、毒素に強固に保持されている2個のZnの1個のZnの重要なリガンドであることが判明した。
|