研究概要 |
ヒトパピローマウイルス16型(HPV16)のE6遺伝子には粘膜悪性病変関連HPVに共通して存在するイントロンが存在し、alternative splicingによりtruncated E6蛋白をコードしうるE6*I遺伝子が生じる。我々は、子宮頚部病変におけるE6遺伝子のスプライシングの定量に初めて成功し、E6 ORFより転写されるmRNAの80%前後がスプライスしたE6*ImRNAであることを報告した(Shirasawa et sl.、Virogy、1991)。更にこのE6およびE6*Iの機能を追求した結果、HPV16自身のエンハンサー・プロモーターに対して、E6は抑制、E6*Iはトランスアクチベーション活性を有することが明らかとなった(日本ウイルス学会、1992,Shirasawa et al.,Virology,in press)。以上のことから、E6・E6*I遺伝子は粘膜悪性病変関連HPVの転写制御に関与し良性病変関連HPVの様に宿主に対してCytopathic Effectを起こすことなく比較的低コピーで存在する性質に寄与している可能性が示唆される。本研究は、このE6・E6*I遺伝子産物の転写制御機能の作用部位を明かにすることを目的とした。 HPV16エンハンサー部位を除いたp97プロモーターのみをCAT遺伝子上流に接続したレポーターに対して検討した結果、p97プロモーターに対するE6・E6*Iの活性が認められた。一方、HPV16エンハンサー部分をエンハンサーテスターに導入したレポーターに対しては、E6・E6*Iの活性は、認められなかった。以上の結果から、E6・E6*Iの転写調節活性の作用部位は、プロモーターであることが明らかとなった。 そこで、HPV16のプロモーター部位に存在するTATAボックス、CATボックスに変異を導入して、検討した結果、どちらのエレメントに変異が導入されても、その活性は依然として残った。 以上の結果から、E6・E6*Iはこれらのプロモーター・エレメントとは独立に転写に関与する事が示唆された。
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