EBVの上皮細胞における感染性、増殖性を決定する要因としてBZLF1遺伝子およびEBNA1遺伝子プロモーター(3種類あるEBNA1プロモーターのうち上皮細胞中で働いている可能性があるFプロモーター)の活性を測定する目的で、それぞれの遺伝子上流のプロモーター領域をレポーター遺伝子CATの上流にクローニングしたプラスミドを構築した。このとき、EBV株間でプロモーター活性に相違があることが予想されたため、Akata株EBVとB95-8株EBVの2つのウイルス株からプロモーター領域をクローニングした。得られたプラスミドをHT29、FL、Rat1、BHKなどのモノレ-ヤ-細胞株にトランスフェクトし、CATアッセイによりプロモーター活性を測定した。その結果、BHK細胞にFプロモーターをトランスフェクトした場合のみプロモーター活性を検出することができた。他の細胞でプロモーター活性が検出できなかったのは、トランスフェクションの効率が非常に低いことが原因だった。この点を克服するため、リンパ球にEBVが感染するときのレセプターであるCD21の遺伝子を種々のモノレ-ヤ-細胞株に導入してCD21を持続的に発現している細胞株を樹立し、実際にEBV感染を行い感染が成立している細胞中での上記プロモーターの活性を測定することを計画した。現在までに、CD21を持続的に発現させたRat1およびBHK細胞が得られ、それらの細胞株にEBVを感染させたところ、Rat1細胞には感染が成立し、EBNAの発現が観察されたが、Fプロモーターからの転写物は検出されなかった。また、BHK細胞には感染が成立しなかった。今後はヒトの上皮細胞由来の細胞株についても同様の実験を行い、EBV感染後の遺伝子発現状態を解析したい。
|