研究概要 |
本研究はロタウイルスワクチンの開発と評価に必要な、血清型1、2、4型ウイルスによる動物感染モデルの確立を目的として、マウスへの感染性を有するサルロタウイルスSA11株と感染性のない血清型1、2、4、9型ヒトロタウイルス(HRV)の間で遺伝子再集合体(reassortant)を多数作成し、その遺伝学的特徴を解析した。 1.SA11株と血清型1(KU株)、血清型2(DS-1株,HN126株),血清型4(Hochi株),尾よび血清型9(WI61株)HRVをそれぞれMA-104細胞に混合感染させた後、培養液を血清型3特異的中和単クロン抗体とHRV株とのみ反応する抗VP4中和単クロン抗体の存在下で培養を3回繰り返した。抗体による選択を経た培養液を用いてプラークをランダムに40クローンづつ分離、培養し、それぞれのクローンにおける11本の分節RNAの由来と抗原性を解析した。 2.得られた計200のウイルスクローンはいずれもVP7がHRVに由来し、VP4がSA11に由来する抗原モザイク型遺伝子再集合体であることが確認された。また、SA11とHRV KU株,Hochi株,WI61株間での遺伝子再集合体では5種類のgenotypeが見られたのに対し、DS-1株,HN126株との間ではそれぞれ17,11種類のgenotypeが検出され、SA11と混合感染させたHRVの種類により、分節RNAの親株からの選択の様式には違いがあることが示唆された。得られた遺伝子再集合体ではVP7遺伝子以外の多くのRNA分節はSA11に由来する傾向が見られたが、gene5のみはHRVからの選択率が他に比して有為に高かった。 3.得られた遺伝子再集合体のうち、SA11/KU-R1,SA11/DS1-R1,SA11/Hochi-R1はVP7遺伝子のみがそれぞれ血清型1,2,4型HRVに由来し、他の遺伝子はすべてSA11由来の単一遺伝子reassortantであることが判明した。これらの株はHRVの異なる血清型を有しつつも親株SA11と同様にマウスへの感染性を持つ可能性が高い。これらの遺伝子再集合体のマウスでの感染性、下痢起因性については現在詳細な検討を進めている。
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