研究概要 |
ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)の糖蛋白gBには中和に関与するエピトープがある。HCMV抗体陽性の血清を検索したところ、このエピトープに対する、抗体陰性例が多数認められた。しかしこの抗体陰性者より分離されたウイルスには変異が無いことから宿主要因の関与が示唆された。そこで、このエピトープに対する抗体産生の有無と主要組織適合抗原との関係を検討するために、系統の異なるマウスを用いて抗体産生能の差異を検討することを目的に実験を行った。 大腸菌で発現させた融合蛋白を用いた以前の解析から、ヒトモノクローナル抗体(C23)で認識されるgBの中和に関与するエピトープは17個のアミノ酸からなる領域に含まれると推定された。そこで、この配列に相当するペプチド(NETIYNTTLKYGDVVGV)を合成した(純度約25%)。このペプチドをコートしたマイクロプレートを用いてELISAを行ったところ、C23抗体およびHCMV抗体陽性血清と反応することが確認され、その検出感度はウェスタンブロッティング法よりも優れていた。この合成ペプチドをH-2ハプロタイプの異なるマウス(C3H/HeJ,BALB/cA,C57BL/6J)にアジュバントと共に免疫した。免疫3週間後に血清を採取して、ウェスタンブロッティング法で抗体産生の有無を解析したが、何れの系統のマウスでも検出感度以下であった。今後この血清および二次刺激後の血清をELISAで検討する予定である。さらに、今後の検討課題として、免疫原として融合蛋白を用いたり、自然感染に近い様式で抗原を提示できると考えられるプラスミドのマウスへの直接導入も試みたい。
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