1.ヒトT細胞株Jurkatから得たcDNAクローンS10について、他の低分子量GTP結合蛋白質とアミノ酸配列を比較した結果、細胞内小胞輸送に関与するrabグループに属する可能性が高いことを明らかにした。 2.S10の種々のヒト培養細胞における発現を調べた結果、T及びBリンパ球と一部の単球系細胞株においてのみその発現が認められ、免疫系の細胞(の一部)に特異的に発現する遺伝子であることを明らかにした。 3.S10のcDNAを大腸菌の発現ベクターに組み込み、マルトース結合蛋白あるいはグルタチオンSトランスフェラーゼとの融合蛋白として、大量にS10蛋白質を合成し、分離精製した。この蛋白をウサギに免疫して抗血清を得て、さらにS10に特異的な抗体を精製した。この抗体は、ヒトのS10は認識できたが、マウスのS10は認識できなかった。 4.S10蛋白質が、細胞内の膜画分及び細胞質画分に多く存在し、核には少ないことを明らかにした。 5.S10のcDNAに恒常的活性型及び優性抑制型の突然変異を導入し、それぞれの変異S10蛋白質を発現するプラスミドを構築した。IL2プロモーターにCAT遺伝子をつないだプラスミドをレポーターとしてJurkat細胞にコトランスフェクト実験を行い、これらの変異S10蛋白質のT細胞活性化に及ぼす影響をIL2プロモーターの活性化を指標として調べた結果、T細胞活性化には影響しないことが明らかとなった。
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