研究概要 |
マウス後天性免疫不全症候群(MAIDS)は、LP-BM5マウス白血病ウイルス(LP-BM5MuLV)感染により発症する免疫不全症候群であり、著名なリンパ節腫脹と脾腫、多クローン性のB細胞活性化を特徴とする。本研究では、LP-BM5MuLV感染後のサイトカイン産生異常とMAIDS発症との関連さらにMAIDS発症後のリンパ球の応答不全に関与するサイトカインについて検討した。 1)MAIDS感染マウスの脾臓におけるIL-2,-3,-4,-5,-6,-10,IFN-gamma,TNF-alpha,-beta,TGF-betaのmRNAの産生をRT-PCR法にて調べると、IFN-gammaとIL-10のみ感染後1週から13週まで持続的な産生亢進を認めた。 2)IFN-gammaやIL-10に対する中和抗体投与後にウイルスを感染させると、抗IFN-gamma抗体を投与したマウスは脾腫、高ガンマグロブリネミア、ConAやLPSに対する応答性低下の程度が軽く、抗IL-10抗体投与マウスはそれぞれの程度が重篤であった。3)MAIDS発症マウス脾細胞の試験管内におけるLPS応答性低下は抗IFN-gamma抗体や抗IL-10抗体により部分的に回復した。両抗体の効果は相加的であった。T細胞を除きLPS刺激を行なうと抗IFN-gamma抗体の効果のみ消失した。これらの結果からLP-BM5MuLV感染後にIFN-gammaとIL-10の産生異常を認めること、IFN-gammaはMAIDS発症に促進的にIL-10は抑制的に作用していることが示唆された。さらにMAIDS発症マウスにおいてはIFN-gammaとIL-10がLPS応答性低下に関与していること、IFN-gammaによって誘導されるLPS応答性低下にT細胞が重要な役割を果たしていることが示唆された。現在、LP-BM5MuLV感染後のIFN-gammaとIL-10の産生細胞ならびに標的細胞の同定とその役割について解析ならびにIFN-gamma産生阻害剤やIL-10を用いたMAIDS発症抑制法の開発を進めているところである。我々の研究成果はHIV感染後の免疫不全症発症におけるIFN-gammaとIL-10の関与の把握にも重要な基礎データとなることが期待される。
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