近年、栄養学的観点から微量元素への関心が高まっている。しかしながら、生体内微量元素(超微量元素を含む)の測定法や微量元素栄養状態の判定およびその生理作用は、研究途上である。本研究では、電気炉加熱昇華法を誘導結合プラズマ発光分析に応用し、超微量元素の測定を目指した。さらに、微量元素欠乏動物を作製し、その生理作用への影響を検討した。 既設の発光プラズマ分析装置にアナログ出力端子を設置し、電気炉の加熱瞬間原子化(フラッシュアトマイジング)をトリガーとして高速レコーダーに出力を記録した。錫単味溶液では、約50倍程度の感度の上昇が認められた。共存元素の存在によってバックグラウンド発光の増強が認められた。オキシ塩化ジルコニウムによる共沈法では、さらにバックグラウンド発光が増強し、ジルコニウムによるメモリー効果を生じ、不適当であった。バックグラウンドの共存元素による上昇は、有機溶媒抽出-溶媒揮発除去によって防止でき、生体試料の分析に応用可能である。 錫欠乏飼料にて飼育したラットには、血漿中トリグリセリドの上昇およびコレステロールとリン脂質の低下が認められ、錫が正常な脂質代謝の維持に関与していることが示唆された。また、ルビジウム欠乏飼料にて飼育したラットには、血漿カリウム濃度の上昇や血漿中尿素窒素の上昇が認められ、ルビジウムの不足によって腎機能が低下することが示唆された。
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