研究概要 |
随時血糖160mg/dl以上または尿糖(+)以上の男子103名(平均年齢:45.6±8.1歳)について、耐糖能異常者で低下の見られる血中1,5-anhydroglucitol(1,5-AG)、空腹時血糖(FBS)、ヘモグロビンAlc(HbAlc)を測定した。1,5-AGについては年齢と負の相関が認められたため、1,5-AGについて年齢補正を行ったが、HbAlc、FBSと負の相関を認めた。 また、他の職域の尿糖または血糖の異常を示した男性作業者41名(平均:46.1±8.8歳)に75gOGTTを実施し、(1)血糖、Insulin、1,5-AG、(2)HbAlc、フルクトサミン(FRU)の5項目を測定した。(1)の3項目は空腹時、糖負荷後30分、60分、120分の4時点で、また(2)の2項目は空腹時に測定した。対象者はOGTTの結果により糖尿病型、境界型、正常型の3群に分類した。また、Insulin分泌能の指標であるInsulinogenic Index(Index,{Insulin(負荷後30分)-Insulin(空腹時)}/{血糖(負荷後30分- 血糖(空腹時)})を算出した。糖負荷試験中、1,5-AGは糖尿病型で負荷後30分に軽度の低下が認められ、研究目的で1,5-AGを測定する場合には空腹で測定すべきであると考えられた。空腹時の各種糖代謝指標(1,5-AG、FBS、HbA1c、FRU、Index)間に有意な相関が認められた。なお1,5-AGと年齢とは有意な相関は認められなかった。FBSと他の糖代謝指標との間の相関が最も顕著であったので、各種指標についてFBSを補正したが、各種指標間で有意な相関が認められたのは1,5-AGとIndex、HbAlcとFRUの2つの組み合わせであった。Indexは負荷試験当日のInsulin分泌能を示していることより、FBSを補正した1,5-AGとIndexとの間に有意な相関が認められたことは、1,5-AGが測定時点での糖代謝状況を反映していると一般に考えられていることと矛盾しない結果と考えられた。 耐糖能異常者管理に関する各種指標の組み合わせについては、なお検討を要するが、1,5-AGはFRUやHbAlcとは異なった扱い方をすべきと考えられた。
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