研究概要 |
肺胞マクロファージを低濃度(12.5mug/ml)の鉱物繊維で一次刺激を行った後、惹起因子としてLPS(lipopolysaccharide)を与えて出現するTNF産生に及ぼすプライミング効果について、鉱物繊維の種類間で比較検討した。まず、9周令Wistar系ラット(雄)を気管支肺胞洗浄し、肺胞マクロファージを採取して濃度調整(5×10^5cells/ml)し、5種類の人造鉱物繊維と5種類の天然鉱物繊維(12.5mug/ml)をin vitroにて暴露した。24時間培養した後、LPSを加えてさらに24時間培養し、遠沈後上清を採取して冷凍保存した(-40°C)。この上清につき、L929腫瘍細胞を用いるバイオアッセイ法によりTNF活性を測定した。繊維の暴露がないコントロール(NO)と比べて、すべての繊維状物質で有意(p<0.05,p<0.01)に高いプライミング効果がみられた。人造鉱物繊維では、グラスファイバー(GF)とチタン酸カリウムファイバー(KF)が硫酸マグネシウム繊維(ML,MS)に比べて有意(p<0.01)に高く、天然鉱物繊維では、クリソタイル(CH)及びアンソフィライト(AN)がエリオナイト(ER)に比べそれぞれ有意(p<0.01,p<0.05)高い傾向を示した。50mug/mlの繊維濃度の結果と比べてみると、KFとAMでプライミング効果が出現すること及びCHが高い傾向を示したこと以外は、ほぼ同様の傾向が確認された。In vitroにおいて、KF、GFおよびCFは、天然鉱物繊維に匹敵するLPS刺激TNF産生に及ぼすプライミング効果があると考えられる。また、これらの繊維に共通した特性としてzeta電位が低いことが挙げられるが、これが本効果をもたらす原因となったかどうかを判断することは今回の結果からだけでは困難であると思われる。LPSはグラム陰性細菌の外膜の構成成分として常時体内に存在しており、この刺激によるプライミング効果は感染に対する炎症作用を増強させるため、この効果の有無を確認する本in vitro系は、in vivo実験系への前階段でのスクリーニングシステムの一つとして有用であることが示唆された。
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